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来年度税制改正大綱を発表

岸田新政権になって初めての税制である。税制改正の看板は「成長と分配の好循環」を進めるため、賃上げに積極的な企業の法人税を軽減する「賃上げ税制」の強化と「新型コロナウイルス感染症の影響緩和のために設けられる減税措置」である。
では具体的にはどうであろうか、賃上げ税制では、賃金を増やした大企業は法人税から差し引く減税率はどうかと言うと、給与総額を4%以上増やし、かつ教育訓練費を増やした場合は30%の税額控除、中小企業は給与総額を2.5%以上増やし、かつ教育訓練費を増やした場合は最大40%の税額控除を受けられるというもの。日本の給与水準はこの30年間上昇していない。先進国で際立った個人の収入が増えない国になった。そのため物価が上がらず、東南アジア諸国からは、今や日本は昔の後進国並みの安い物価の国になったので、インバウンドが多くなったのである。日本は今さら急に賃金が上がるのだろうか、賃上げは、元来、努力によって利益を増やした企業が従業員に報いる形の結果である。減税を餌に、企業を賃上げに誘ったところで結果は見えている。さらに政府は中小企業の3分の2が赤字であるので、減税とは無縁であるのは理解しているので、赤字企業に補助金を出す代わりに賃上げを要請する。こうなると本末転倒もいいところで、自由社会の競争原理を阻害してしまう。
日本はGDPが増えない、生産性が低い国なのである。その大きな原因は消費が増えないこと。つまり国民はカネを使わないのである。収入の先が見えないので、補助金をもらっても、モノを買わずに貯める。今回の10万円も火を見るよりも明らかだ。減税効果よりも、補助金行政の後遺症が残るのが心配だ。
次に住宅ローン減税の改正、これが岸田内閣の目玉だというから驚く。改正内容は所得税や住民税から差し引ける金額は、年末ローン残高の1%から0.7%に引き下げられる。理由は今やローン金利は1%を割りこんでいるので、逆ざやであると。私に言わせればそうではないだろう、もともとこの制度は内需拡大で建設を促し、持ち家を促進するために「マイホームで減税」を謳ったはずだ。せこい話である。さらに、改正で目を疑ったのが住宅ローン控除を受けるのは、年所得3000万円以下のものだったのが、改正後は2000万円以下になったのである。理由は「高額なローンを組める富裕層ほど減税効果を得やすい」からだと。ここまでくると馬鹿かと言える。もともと減税でマイホーム取得を釣ったのだが、これでは富裕層は家を買うなという事である。年所得2000万円以下の者が、例えば都心に、どんな家やマンションが買えるのだろうか?1000万円台の所得の人はもともと東京都港区にマイホームを建てるなどのことは考えていない。この改正は積水ハウスや大和ハウスなどの賃貸マンションの建設を推し進めるだけの効果でしかない。GDPを上げるのであれば。一定水準以上の所得者にカネを使ってもらわなければならない。新築を建てれば、家具も電化製品も買うのである。GDPを上げたいのに、カネを使えるものにストップをかけているのである。財務次官の矢野氏の天下国家論もいいが、庶民の生活論も高級官僚で議論をしていただきたいものである。

☆ 推薦図書。
天野篤著 「転職」 プレジデント社 1600円+税
著者はご存じ天皇陛下の執刀医で当時順天堂大学医学部教授の心臓血管外科医のカリスマである。2020年大学の定年の時を迎え書いた本である。「医師である限り、人の役に立ち続けたい。だから、一歩でも前進し続ける!」50代60代こそ心を燃やせ、「闘う」心臓外科医に学ぶ無定年を貫く生き方。氏は浪人を3年したのち日大医学部に入学した。彼の父親は心臓病で亡くなった時、心臓外科医になる決心をした。彼曰く「医学会は東大、京大、阪大、慶応が主流で、2,3流大学、それも三浪の自分を受け入れてくれる国立病院などない」努力しかないないと、毎日家にも帰らず民間病院の心臓手術で頑張った、手術の際の手の素早いことが絶対なので、毎日、左手で箸を持ち、右手の爪を切るときは爪切りを使わず、鋏を左手に持って切った。彼は冠動脈バイパス手術において人工心肺装置を使わない、いわゆるオフポンプ手術で心臓を一時たりとも止めないで手術を行う世界第一人者である。天皇陛下(現上皇)の人間性に感服したくだりも読みこたえがある。「彼は命を軽んじる医師は許せない」次の下りは思わず笑った。「聴診器をあてない医師はダメだ」今は、あてなくても医療機器が発達しているので、大丈夫だが、なにより、聴診器をあてて「きれいな音ですよ」と患者に声をかけるだけで、どれだけ患者が安心するか、かつての日野原重明医師の言葉とそっくりである。苦労人である天野先生ならではある。

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