アメリカ連邦最高裁はトランプ大統領が導入した相互関税を違憲と判断した。判決により総額1330億ドル(20兆円)に上る関税返還請求訴訟の混乱が予想される。それというのも企業経営者らは世界各国からの輸入品に課せられた関税をいかに取り戻すかに悩んでいる。
ウオール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によれば一部の企業はこの返還訴訟の訴訟混乱を避けたいと考えていて、還付請求権(Tariff Refund)の売却をするかも知れない。というのも最高裁の判決を待つまでもなく、多分トランプ大統領が負けると予想していた投資会社は、せっせと会社からこの関税還付請求権を買い集めてきたのである。同紙によると関税還付請求権の価格は最高裁の判決の前には、額面に対して20%前後だったが、判決後には40%に急上昇した。投資会社は「今、額面の40%から45%で売るか、市場の変化を見込んでもう少し高値で売るか、それとも100%になるまで待つか」の選択肢に移ってきたという。ただ中小・零細企業は出来るだけ早期に高値で売りたいと考えているが、訴訟費用を負担できる大企業は高額な関税還付金を受け取るまで待つ姿勢である。今回の還付金騒動は投資家があらゆる権利を買いあさるClaim tradingの世界では、最新の機会(Latest opportunity)だと世界の注目を集めている。例を取ればヘッジファンドは経営破綻した暗号資産交換大手会社FTXの債権を買い付け、Lehman Brothersの残債をかき集めて巨万の利益を築き上げた。今回の判決で関税還付請求権について権利保有会社が実際に現金化できるのか、できるとしたら、どれくらいの期間がかかるのかについては不透明さがあるのは歪めない。最高裁判決はすでに納付された関税1330億ドルについては明言したが、還付については触れなかった。還付を求めてアメリカ政府を提訴する会社は増えているので関税還付請求権の価格は上昇している。手続きに数年要するにしても還付金が確実に手に入ると見ている者が多い事を物語っている。関税還付請求権を買い集めている企業の大手ではKing Street CapitalやAnchorage Capital Advisorsがある。またアメリカの銀行のJefferiesやOppenheimerなどは関税還付請求権を売りたい企業と買いたい企業の仲介をして仲介手数料を稼いでいる企業も多く出ている。この最高裁判決は違った意味でも多くのビジネスを生み出している。破綻企業専門会社や、弁護士事務所もこのビジネスに参戦してきている。日本と異なり弁護士費用が高額なことから、少額の関税還付請求権を売却した企業では弁護士費用を仲介した投資会社が負担している例も多々あるという。最高裁判決直後は額面の30%から40%であったのが、いまや最高で75%で取引された例もあるという。日本ではないビジネスだが、日本も納税者が国税当局を相手に税金還付訴訟を起こした場合、勝った時の税金還付額を予想して債権にし、売却するビジネスも考えたらどうだろう。トランプ大統領の関税訴訟がこれほどのビジネスを生む、トランプ支持者が根強いのもわかる気がする。
★ 推薦図書。
佐藤弘幸著 「国税最強の精鋭部隊『コメ』」 扶桑社新書 1100円+税
著者は元東京国税局資料調査課の職員である、今、テレ朝系の連続ドラマ「おコメの女」を監修している。ドラマはマルサも手を出せない巨悪脱税を追う国税局資料調査課「コメ」の実態をドラマ化している。本書はコメがなぜマルサより怖いのか、脱税者の標的をどう絞りこむのか、そのための情報収集をどのようにやっていくのか、ぽろっと出る脱税者のサインとは、などなど、さすが現場上がりの者ならではの内容である。この本は脱税を試みる者より、むしろ新米の税務署員や若い税理士が読むと為になるのではないか。
