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アメリカ市民権離脱者、グリーンカードホルダー放棄者、過去最高

最近のForbesで2020年の米国市民権者及びグリーンカード所有者の放棄者数が6,706件となり、過去最高数となったと報道された。その原因は何か? これは主に海外に在住する米国市民権者及び永住権所有者が離脱をしているということで、パンデミックの影響もあると考えられるが、それよりも、やはり米国税務当局の取り締まりが厳しくなっていることが考えられる。トランプのせいでもある。因みに市民権・永住権放棄申請費用は2,350ドル(25万円)で先進国平均の20倍の高さである、ちなみに、日本の国籍放棄申請料は無料なのである。
米国市民権者は海外に居住しているにも拘わらず、非居住の米国において、全世界の所得を申告しなければならない為、海外に住んでいる米国人は毎年お金と時間をかけて米国で申告をするという事になる。先進国でこのような税務制度を取っている国は米国だけだ。勿論、米国との租税条約がある国では2重課税が発生しないという建前になっているが、地方税や住民税など国税以外の税金もあり、全て外国税控除で2重課税を避けることは困難である。また、外国の銀行口座開示に関わる、米国独自の税法FBAR(Foreign Bank Account Reporting)があり、違反すれば民事及び刑事罰に課される厳しいものであり、また、FATCA(Foreign Account Tax Compliance Act)では海外の金融機関口座及び投資の開示を行うもので 、それぞれ特別なフォームの提出義務があり、誠に厄介なものになってきた、これはオバマ政権からのものであり、私なんかもうんざりしている。
米国市民権及び永住権離脱者6,706件は少ないのではないかと思われるが、最近ではこの数字以上に離脱者がいるとされている。なぜならカナダ人の米国との2重国籍者で米国籍を放棄するものが多くなり、米国籍を放棄したにも拘わらず自分の名前が財務省の離脱公表リストにないという報告が多くなってきたのだ。カナダのメディアが調べた結果、米国財務省やFBIが把握している数字はもっと多いということがわかった。これは財務省が発表する数字は市民権離脱時にIRSに Exit Taxの申告者のみに限定されているということが大きな理由のようだ。
米国にはExit Taxというのがあって、米国市民権もしくは永住権者が、離脱時に全世界の財産を全て売却した場合のキャピタルゲイン税を支払えというもので、過去5年間問題のない申告しており、純資産が200万ドル(2億円)ある、もしくは過去5年の平均納税額が17万1000ドル(1800万円)以上の者がExit Taxの対象となっている。その申告者数は限定されていると共に、そもそもExit Tax対象者でも申告しない者もかなりいる。それではなぜ、米国国務省やFBIは離脱者を必死で把握しようとするのかだ。
FBIでは銃規制上の観点から米国市民権離脱者をトレースしていると言われている。これは米国では銃を購入できるのは米国市民権者のみとされていので、(永住権者でも一定の条件をみたせば購入出来る。)市民権や永住権離脱を図った時点で購入出来なくなるわけだ。、少し古い統計だが、その数は2014年にNo Buy Listで2万7240人になると言われている。FBIは全世界の米国大使館や領事館で受諾された市民権離脱申請者を監視しているようである。Exit Taxだが、ある程度資産を持つと市民権もしくは永住権離脱時に申告をする必要がある。申告しないと時効がなくなってしまうのでペーパー上離脱したとしてもIRSにいつでも追いかけられることになる。米国市民権や永住権を持つのも厄介な時代になったという事だ。しかしCRSに加盟していない米国は、日本の富裕層にとって、ある意味ありがたい国ではある。

☆ 推薦図書 ☆
児玉博著 「堕ちたバンカー・国重淳史の告白」 小学館 1800円+税
かつて「住友銀行秘史」を書いた、元超エリートバンカーである国重氏、若手行員時代から「伝説のMOF担」として名を馳せ、平和相互銀行事件での活躍で「将来の頭取候補」と目される。そしてイトマン事件を内部告発し住友銀行の救世主とまで言われた。彼の妻は上場建設会社オーナー経営者の長女で、仲人は樋口廣太郎(後のアサヒビール社長)主賓は頭取、堀田庄三、上司は西川善文(後の頭取)と将来を約束されたに等しかったが、女性関係がだらしなく、磯田一郎頭取の女性秘書との間に子をもうけ、そのため巽外夫頭取の怒りを買い左遷されて退職、その後、楽天の会長になったが、そこでも女性問題で三木谷社長の逆鱗にふれ退職。昭和43年東大卒でも、いまや70歳を超え後期高齢者である。
彼の旧知でライターの著者が直接取材した本である。今は赤坂のワンルームマンションに一人で住み、日常、失禁を繰り返し、かつて国重が身を任せた時代の圧倒的な熱量は、日本社会から見事なまでに消え去った。それとともに、国重の輝きは失せていったのである。国重の栄光と転落のすべてを、ドキュメンタリーに綴った労作である。

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