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トランプの米中貿易戦争、カリフォルニアのナパワイン大損害

カリフォルニアワインで有名なナパでは、トランプ大統領が仕掛けた貿易戦争でナパワインが大打撃を受けているとBloomberg Newsが報じた。元NBAヒューストンロケッツの有名中国人バスケットボール選手、2メートル32センチのYao Ming選手を憶えている人も多い。億万長者でもある。彼はナパに自分のワイナリー(Yao Family Wines)を持っている。そして、その多くを中国へ輸出している、しかし、中国によるアメリカへの報復措置として、アメリカから中国へ輸入されるワインに対し93%もの関税を習近平がかけた。そのため、中国人の購買意欲が著しく減退し、アメリカ産ワインは在庫の山となってしまったのである。

 

Yao Ming Winesは2011年に創業し、母国、中国への輸出を主に生業としてきた。この貿易戦争のおかげで昨年は輸出量が半減したという。カリフォルニアのワイナリーはナパ以外でも、大きい所も小さい所も、ここ10年ほど中国との関係を地道に築き上げてきたが、ここで突然トランプの貿易戦争に巻き込まれ、ワインビジネスは危機的状況になった。中国へのアメリカワインの輸出額は2017年に最初の関税報復措置を受け、2018年には25%減少した。特にカリフォルニアワインは他国への輸出が多く、大きな打撃を受けたのである。

 

カリフォルニアのワイナリーは何年も中国市場で地道に開拓をしてきたわけだが、このまま関税がかけ続けられれば中国の消費者にはアメリカ産ワインは高すぎるという意識が高まり、関税がなくなったとしてもアメリカワインの購入を控え続けることを恐れている。ソックスを売っているわけではないので直ぐに商品棚に戻ることはなく、消費者の自信を取り戻してもらうには時間がかかると専門家は見ているとアメリカの報道は伝える。

 

上海にある有名レストランM on the Bandでは、ナパのSwainのソーヴィニョンブランは関税がかけられる前、120ドルで売られていた。関税のないニュージーランド産のソーヴィニョンブランに比べて50ドルほど高く設定されているに過ぎなかったが、中国による関税後は220ドルほどになっており、このレストランは今ではSwainのソーヴィニョンブランは輸入していない。

 

アメリカのワインメーカーは中国の代わりとなる国を模索中だが、トランプはTPPを破棄する宣言をしてしまった。もしTPPが実施されていれば、日本によるアメリカワインへの課税が撤廃され、オーストラリアやニュージーランドでも同様になるはずだったのにと、アメリカワイナリーは嘆いている。

 

中国資本の入っているナパのMaxville Wineryでは各10か月で中国への輸出量がほぼ半減しており、ベトナムやタイなど他国への輸出を増加させると言っているが、そう簡単ではない。実はトランプ自身もヴァージニア州にワイナリーを所有し、息子エリックが運営をしている。しかしトランプ氏はフランスの関税が高すぎると言うだけで、中国の応酬的関税については何も言及がない。不思議である。

 

一方 Yao Wineだが、最も人気のあるワインが95ドル、最も高いもので258ドルだ。中国の関税の影響は厳しく、この関税を回避するため中国でワインを作ることを検討したと発表した。もしこれが実現されれば、アメリカのワイナリーが歴史上、初めて中国に進出することになるが、果たしてどうか。ワインを巡る世界の問題に大変興味があるが、日本のマスコミは一切触れない。これも不思議である。

 

 

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森功著 『ゴルフトーナメントスポンサー興亡史』 幻冬舎新書 840円+税
東京オリンピックのゴルフ競技開催会場は霞ヶ関カンツリー倶楽部。ここは日本のゴルフ興隆の地である。1957年にそこで行なわれた試合が火付け役となり、一大ゴルフブームが到来、1970年代にはビッグトーナメント全盛期を迎える。スポンサーには住友ゴム、三菱自動車、三井住友などが参入、バブル崩壊後はパチンコ・不動産など新規企業が勢いを増した。
最近は若い人がゴルフをやらなくなった。人口減少もさることながら、プロゴルフトーナメントを主催している会社でさえ、社員たちはゴルフをやりたがらない。それでも、なぜスポンサー企業は大金を出してまで冠スポンサーになるのか。会社のイメージアップや商品を宣伝するためとなる。したがってゴルフ人気が低調で広告効果がないなら、冠スポンサーになる意味がないということになる。しかし問題はそう単純ではない。世界を見てもゴルフトーナメントは、経済の盛衰にもまれ変化していった歴史がある。ゴルフトーナメントは時代を映し出す鏡のようだ。ゴルフトーナメントは日本経済の浮沈を反映してきた。今年10月には冠スポンサーとしてZOZOが新たに加わる。ゴルフをとおして日本産業の盛衰を書いた本である。

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