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金地金の密輸、過去最高

全国の税関が平成30年に摘発した金地金の密輸入は1088件だったことが、財務省が2月22日に公表した報告書で明らかとなった。日本の消費税率が8%となったときから急に増え始めた。今年10月から消費税率が10%となることから、もっと密輸が増えるだろう。

 

金、ゴールドは世界共通の価格で取引されている。したがって、世界のどこで金を買おうと同じ価格である。しかし、日本での売買には消費税8%がかかるため、香港で金1億円を買って日本で売ると、そのままの価格の売買でも、日本で売れば1億800万円の手取りとなる。つまり8%分が儲かる。今どき、右から左へ売って最終利益8%となる商品は、そう多くあるまい。

 

原則として、海外から日本に金を持ち込む場合は、成田空港であれ関西空港であれ、持ち込む際には税関で予め8%分の税金を納めなければならないが、入国時に申告せず税関をすり抜け、日本国内の買い取りショップに持ち込み売却し、消費税分を儲けるという手口が横行している。

 

消費税率分が儲かることから、消費税率3%の時に密輸はゼロだった。つまり日本に持ち込んでも旅費も浮かなかったのであろう。消費税率5%の平成25年には年間12件だったが、消費税8%となった平成26年には119件、平成27年には465件、平成30年には遂に、前述のように1088件、押収量は2119㎏であった。

 

密輸の形態別でみると、航空機の旅客が持ち込むケースが653件で最も多く、航空貨物390件、国際郵便36件と続く。そして、どこから金が持ち込まれたのか、密輸元は香港332件、韓国319件、中国224件、台湾151件となっている。現実には、金地金密輸は、こんなものではないだろう。摘発したのは、いずれも表からの輸入だけであり、実際、福岡などでの密輸取引は凄まじいものがあるという。

 

平成31年度税制改正では、さすが安倍内閣もこの問題に注視して、今年からは金地金を売却しに来た者の身分証の控えがない場合は、買い取り業者が売り主に代わって消費税を納めなければならないとした。これで防げるかどうか?

 

 

☆ 推薦図書 ☆
河谷禎昌著 『最後の頭取』 ダイヤモンド社 1800円+税
著者、河谷禎昌氏84歳、北大法学部卒、祖父と兄は弁護士、父は裁判官の法曹一家。1957年(昭和32年)に北海道拓殖銀行に入行、94年6月から97年11月の経営破綻まで頭取を務めた。その後「最後の頭取」となった著者は、特別背任罪で実刑判決を受け、1年7か月を刑務所で過ごした。バブル崩壊後、経済事犯で金融界のトップ連中は多くの者が捕まり、起訴された。しかし、都市銀行の経営トップで収監された例は、他にない。バブル経済の生成と崩壊を実体験した生き証人だ。「ごえんや」の中岡代表が作ったイージーキャピタルへの多額の融資など、彼が頭取になる前の出来事だが、著者河谷氏は「事件から20年が過ぎて、自分にけじめをつけるため、この本を書くことにしました。銀行員という職業を通じて、心臓が凍るような修羅場も経験し、多くの失敗も重ねました。これから皆さんも、形は違えど、時代の転換期に直面することがあるかもしれません。そんな時、どうすればよいのか。私の体験記から、何かしらの教訓を見つけて、自らの人生に生かしていただければ幸いです」としている。大手銀行のトップで収監された唯一の男が明かすバブル経済の真実である。今までこの手の銀行本は住友銀行OBが独占していたが、当時を赤裸々に書き綴る日本経済史としても価値ある書である。

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