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日本の来年度税制、発表

12月14日、与党の平成31年度税制改正大綱が発表された。大綱を読んでみると、全122ページであるが、来年10月に消費税が8%から10%になることから、その影響の対策がほとんどを占める。消費税率を10%に引き上げた場合、国民の家計負担は5.6兆円増える。ここから軽減税率1兆円と教育無償化1.4兆円など家計に還元される税を差し引くと、実質家計負担増は2.2兆円となる。その分、消費などが減少する反動を恐れ、特に車と住宅を重視し、車・住宅あわせて1670億円を減税するなどした。

 

例えば自動車税(日本ぐらいしかない)、10%増税後、自動車を新たに購入・登録した車を対象に年1000円~4500円引き下げる。車の平均的な保有期間である13年目には、総額1320億円の減税になるという。さらに自動車取得時の税金も軽減、購入時に支払う燃費課税を1年限定で1%下げ、一部車種は実質税負担がゼロになるという。

 

一方、住宅は、10%増税後から2020年末までに契約して入居する家の場合には、今まで住宅ローン減税は10年が最長であったが、それを13年に3年間延長する。現行の年末住宅ローン残高(4000万円上限)の1%が所得税から控除されたが、11年目から建物価格の2%分を3年かけて所得税から控除するという。

 

しかし、少子高齢化時代にマッチした税制とは程遠い。当初税調で言われていた高齢化に向けた退職金課税の改正、アメリカ方式を導入しようとした個人退職勘定(IRA)、つまり老後の資金を税優遇付きの口座に毎年積み立ててゆく制度などは見送られた。

 

アメリカやヨーロッパの来年度税制の柱はデジタル経済への対応である。アマゾン、グーグル、フェイスブックなど工場も支店もないのに、全世界で売上を上げ、利益を生む。日本の税法の根本的な考えは目に見える物理的な拠点に集まる利益に着眼した課税制度である。欧米では従来の国際課税方式を見直さなければならないとし、国別の売上や利益をもとにしたデジタル課税方式の創出に向けた議論が活発だが、日本の税制調査会は新しい税制創出に向けた議論はほとんどなかった。

 

「未婚ひとり親支援税制」も重要だが、議論の中心が消費税が2%増税されることに対しての手当てに右往左往し、肝心の高齢化社会に対応した税制や世界規模のデジタル課税とどう向き合うかの姿勢はなく、いつまでもバラまき方式の税制でよいものだろうか。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
田坂広志著 『なぜ、優秀な人ほど成長が止まるのか』 ダイヤモンド社 1500円+税
著者は東大卒でマネジメントと経営の世界を歩んできた。その経験で、優秀な人ほど、成長が止まってしまうということである。なぜ、そうなるのか。7つの「成長の壁」とそれを乗り越える7つの技法について書いている。
①「学歴の壁」…優秀な人が突き当たる第1の壁は、優秀さの切り替えができない。学歴の優秀さだけでは仕事はできない。
②「経験の壁」…仕事はそれなりにできる。一流の人からみれば拙さがある。優秀な人はそれに気づかない。
③「感情の壁」…感情に支配され、他人の心がわからない。
④「我流の壁」…我流に陥り、優れた人物から学ばない。優秀で器用な人ほどこの壁に突き当たる傾向がある。
⑤「人格の壁」…常に真面目で仕事はできるが、融通がきかない。状況にあわさず1つの人格でしか対応できない。
⑥「エゴの壁」…自分のエゴが見えていない。
⑦「他責の壁」…失敗の原因を外に求めてしまう。
東大卒の一流企業の社長の比率が案外少ない原因もこの壁にあるのかもしれない。

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