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ユニマット 100億円の申告漏れ

東京国税局はこのほど、オフィス向けコーヒー販売などの大手ユニマットライフなどグループ3社に100億円の申告漏れがあったとして摘発した。

 

またかという感じだが、この手口をわかりやすく言うと、大幅な黒字が予想される会社は、それに伴い多額の税金が発生する。その多額の税金を支払うことが嫌だから、巨額の赤字を抱える会社と合併して損益を通算し、支払う税金を少なくする。ただ、赤字会社と合併しさえすれば税金が助かるかというと、そう簡単なことではない。かなりのハードルを越えなければならない。

 

税法では、このハードルの中心をなすのは「組織再編税制」といって、まず何故、合併をしなければならないのか、その合併には経済合理性がなければならない。税金が助かるからが第一にあってはならない。出光や武田薬品もそうであるが、業績向上や生き残っていくための合併など、大義名分があるのかどうか。国税当局にそれをいちいち説明はしないが、そうであるだろうとする客観性を示すいくつかのチェックッポイントがある。2013年に3社が合併したが、東京国税局は「これらの合併に経済合理性が乏しく、意図的な税金減らしだ」と一刀両断に切り捨てた。

 

しかしユニマットぐらいの大企業である。組織再編税制のチェックポイントである、例えば株式保有状況、資本関係、合併の対価などの問題を全てクリアしているとして監査法人の了承もとっていたはずである。しかし東京国税局の否認によって、赤字と黒字の相殺が認められず、繰越欠損金も引継げなくなった。

 

かつて同様の問題で、ヤフーが2009年にソフトバンクの子会社であるソフトバンクIDCソリューションズを合併し、その翌月に同社の繰越欠損金540億円を使ったが、東京国税局は「節税目的の合併」だとして否認した。この事件は最高裁まで争われ、孫正義氏も法廷で証言に立つなど大変な騒ぎとなったが、最高裁は「ヤフー社長がソフトバンクの子会社に就任してから、買収まで2か月しかないことや、経営陣に関与していないと認められる事実から、ヤフーの一連の行為が、明らかに不自然で、税制を乱用した」とまで判決で言った。

 

当然、最高裁も根拠条文を明らかにしている。法人税法132条の2だ。これは国税局が税法の要件をクリアしているが、意図としては節税目的の行為だっただろうということである。主観的な判断である。同様の規定はアメリカにもある。したがって節税の意図があったかどうかで争われるため、租税法律主義ではなく、当局がダメだと言ったらダメだということである。お上は偉いのである。ユニマットも、もう少し事前にこのようなことを根回しできなかったのだろうか。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
橋本健二著 『新・日本の階級社会』 講談社現代新書 900円+税
今日はイタリア、バーレ歌劇団の「ツーランロッド」を知り合いが出演していることもあって観劇した、総じて良かったが、1幕は退屈した。それこそ舞台から「誰も寝てはならない」と言われているようだった(笑)。
さて、豊かな人はより豊かに、貧しい人はより貧しく「日本型階級社会」が出現したとする著である。ひとり親世帯の50.8%が貧困層の日本。男性の3割が経済的理由から結婚できない日本。中間層は「上昇」できず、子どもは下の階級に転落する日本。1980年頃から始まった「格差拡大」は40年近くも放置され、「一億総中流」はもはや遠い昔。……などなど、SSM調査データなどを基に分析、日本は「格差社会」などという生ぬるい状態にはない、すでに「階級社会」になっているという。階級とは収入や生活程度、そして生活の仕方や意識などの違いによって分け隔てられた、いくつかの種類の人々の集まりのことをいい、その階級の間の違いが大きく、その違いが大きな意味を持つような社会のことを階級社会というのだと。そしてその階級を①資本家階級、②新中間階級、③労働者階級、④旧中間階級の4分類で、世帯平均年収が1060万円以上あると①で、④は年収587万円などとしている。
自分が低収入であると思う人が読む本であると思うが、アメリカを階級社会という人はいない。誰でも、能力や努力や運によって、おお金持ちや大統領になることの可能性はゼロではない。私は階級社会とはツーランロッドの時代のように、あるいは封建時代のように、間違っても農民が大名や王になれない体制国家のことを階級社会だと思っている。日本は士農工商の社会ではない。いくら努力しても、上の階級にたどり着けない国を階級社会という。アメリカ人や中国人が、この本を読むと、なんと日本は貧富の差がない国だと感じると思う。そう思うのは私一人だけではあるまい。

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