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アメリカの税制改革で波乱

今週はアラバマ州で上院議員選挙があった。なぜかというと、アラバマ州選出議員であったJeff Sesionを司法長官に任命したため、補欠選挙となったのである。この州は従来、共和党議員の牙城であったが、今回、民主党のDoug Jonesが選ばれた。もともと共和党の候補Rey Mooreが圧倒的支持を集めていたが、女性問題が発覚し形勢逆転、僅差でJoneが勝った。これにより上院は共和党51議席、民主党49議席となり、共和党の党運営はますます厳しくなってきた。

 

来年度税制はクリスマス前に成立したかったトランプ陣営だが、ここにきてJohn MacCain共和党上院議員が脳腫瘍の治療入院中で、来週ワシントンに戻れるかどうかわからなくなった。しかも同党のRubio議員は、Child Tax Creditを引き上げない限り税制法案に賛成投票しないと言い出す有様。

 

これまで共和党と民主党が合意した案件は成立する。どういうものかというと、2018年に法人税率の最高を35%から21%に引き下げ、所得税率の最高を39.6%から37%に引き下げる。パートナーシップやLLCのパススルー課税は、パススルー収入の20%を控除する。Alternative Minimum Tax(AMT)については廃止。オバマケアについては健康保険加入を義務づける条項を廃止し、健康保険に加入しなくても税務上の罰則規定はない。また、State and Local Taxes(SALT=地方税)の控除については、当初、来年度から所得控除できないということであったが、州税の高いニューヨーク州、ニュージャージー州、カリフォルニア州出の議員からの圧力で、固定資産税も含め1万ドルまで控除できるようになった。また、住宅ローン控除だが、75万ドル(8400万円)のローンまでの部分の利息のみ控除できると上限が設定された。そして最後に相続税は、廃止はしないということで合意されたが、基礎控除は今の549万ドル(6億円)を2倍の1100万ドル(12億円)、夫婦合算で24億円までの遺産については課税しないとした。日本の4800万円に比べて夢みたいな減税である。そして2026年に現行の控除額に戻すとしたが、はたして戻せるのか。

 

トランプは、10年間で1兆5000億ドル(170兆円)にのぼる減税額は経済成長で十分カバーできるとしている。アメリカ来年度税制で恩恵を被り、得をするのはパススルーで賃貸不動産を所有している富裕層である。逆に、住宅ローン控除の上限が抑えられたため、ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルスのように、住宅価格が高いところでは、住宅価格が上昇しないかもしれない。

 

いずれにしても、トランプは減税を先行し、日本は財源確保の増税路線。富裕層が住みにくい日本にますますなる。

 

☆ 推薦図書 ☆
松下隆一著 『異端児』 PHP研究所 1500円+税
この本は友人のPHP研究所編集長 佐藤氏からいただいた。稀代のリーダー平成建設・秋元久雄の生き方を書いたもので、この会社は東大生・京大生が「大工になりたい」と志願する建設会社で、日本一の大工集団を目指している。著者が初めて会った時の印象は「ずいぶん自然体の人やなあ」だった。取材に同行したPHP編集長は、秋元とはもう20年来の付き合いで気心も知れているが、著者に「普通の人じゃないですから」と再三言ったという。
彼の信念は「やり遂げたいことは続ける。続けられなくなった時、諦めた時が負けだ。人間の大切なことは、諦めないことだよ。続けられるかどうかが勝負だから、最後までやる人が人生の勝利者だ」と。これは松下幸之助の信条と似ている。また、会社の定年についてもおもしろいことを言っている。定年の60歳というのは一つの区切りなのであって、終わりではないのである。何より、自分がいなくなっても誰かが代わりにできるような、続けなくてもいいような仕事に就くな。キャリアしか積まなかった人がリストラされ、路頭に迷う。つまり、スキルを積む職に就くべきだ。そして死んだ時が定年だという。
私は今も忙しく働いている。実にためになった本である。

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