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納骨堂が脱税、逮捕

今、都会で大人気なのが、世相を反映した「マンション霊園」「マンション墓地」である。大阪地検特捜部が家宅捜索で摘発したのは、マンション型納骨堂「梅旧院光明殿」を経営する68歳の女性経営者である。関西地方ではテレビCMも流しており、「来てみて便利な梅旧院~」というCMソングが流れているそうだ。問題となったのは何と、9階建鉄筋コンクリートの内に3000基以上の墓を収容、高いものは1基で800万円もする納骨堂である。

 

私は当初、この種のものは宗教法人が経営しているものだと思っていた。宗教法人が墓を売っても課税されない、お布施はもちろん、寄附金にも課税されない。かつて「仏舎利」、つまり釈迦の骨だとして1個2000万円で販売した宗教法人があった。国税局が調査に入って販売数を計算してみると、何と人間一人分では足りない量の骨を売っていた。つまり、釈迦の骨でもなんでもないので、詐欺である。「仏舎利偽造品」であった。しかし国税局は遂に課税できなかったのである。これはお金を払う側から見れば、純粋な仏の骨であり、お布施や喜捨金以外の何物でもないと判断された。

 

今回の事件は「墓」を売るのだから宗教法人しかできないと思ったが、よくよく調べてみると抜け穴があった。確かに、納骨堂の経営は地方公共団体と宗教法人にしか認可されない。梅旧院光明殿の納骨院許可を受けたのは曹洞宗の寺院である宗教法人梅旧院だが、墓の販売代理業として株式会社光明殿がある。寺の説明によると、寺は「光明殿」に墓の販売・管理を委託しただけで脱税には関わりない、と断言した。

 

しかし、株式会社光明殿がほとんど管理運営している実態、第三者から見れば寺が管理運営をしていると信じる。国税当局の摘発が遅れたのも、こうした事情である。この脱税事件で光明殿は税金を払えないだろう。経営者は贅沢な暮らしぶりであったとされるからである。そうなると、このビルは差し押さえられる。永代供養で多額のお金を払った人たちはどうなるのだろうか。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
塩野七生著 『逆襲される文明』 文春新書 920円+税
私が作家の全著書を読んでいるのは、司馬遼太郎、松本清張と、そして塩野七生である。著者は80歳になる。あるとき文藝春秋の編集者は「塩野先生、日本に来たときにはそんなに働かなくとも、少しくらい温泉で寛いだらどうですか」と問うたところ、「私はこんな年になっている。もっとやらなければならない事があるので、遊んでいる暇なんかないの」。これを聞いた時に、私の想像していた人だと思ったものである。
民主政が危機に陥るのは、独裁者が台頭してきたからではない。民主主義そのものに内包されていた欠陥が表面に出てきたときなのである。歴史を経ることで人間は進歩するとは思っていない。それどころか、しばしば大幅に退歩してしまい、その後で前進を再開するのが人間の歴史だと思っているとこの本は書いている。
おもしろいのは、キリストの教えが人々に救いをもたらすほど素晴らしいものならば、何故それがローマ皇帝たちに広まるまで、イエスの死から300年もの歳月を要したのか。それはローマ皇帝たちによる迫害があったと答えるのが常だが、迫害が行われたのは300年経った後の4~5年である。これはキリスト教徒の学者も認めている事実である。
つまり、ローマ人はキリスト教が必要でなかったのである。イエスが死んでも、政治でも軍事でも経済でも発展していたローマ人は、生き方まで命じてくる神は必要なかったのである。それが機能しなくなったときに、自信を失ったローマ人は強力な存在に救われた。それがキリスト教であるとしている。著者は、宗教は、人間が自信を失った時代に肥大化すると。必読の書である。

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