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「居住者」「非居住者」の判断基準

最近、日本の税金が高いとかの理由で日本を離れる者が多くなった。日本以外の国に確定申告書を提出したい者が増加しているが、日本の「居住者」に該当すれば日本で確定申告書を提出しなければならない。一方、日本の「非居住者」に該当すれば、日本での所得以外は申告しないで済む。「居住者」「非居住者」の区分は非常に重要である。

 

今回の事件は、納税者が「非居住者」としたのに対し、税務署は「居住者」と判断した。所得税法2条1項三には居住者を「国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて一年以上居所を有する個人をいう」と定められている。武富士事件、中央出版事件では、これらが争点になった。居住者かどうかは、その者の①日本での滞在日数、②生活場所及び生活状況、③職業、④配偶者や家族の状況を総合的に判断するとしているが。

 

税務署側の判断では、家族全員が国外、国内に職業もない、1年の半分も日本にいないにもかかわらず、日本の「居住者」と認定される事案が増加している。武富士事件では、租税回避意思があったとしても、住所が香港にあったとして国税局側は敗訴しているが、中央出版事件では8か月の乳児に贈与し、乳児の住所の判定においては、両親の生活の本拠地を重要な要素として考慮すべきだとして、国税局勝訴となった。つまり、住所の判断について国税局は明確な指針を持っていないのである。税務署も居住者、非居住者の区別は客観的事実に基づくよりも、その者が日本の税逃れのため、海外に移り住んだかどうかで判断しているようである。

 

日本は租税法律主義である。しかるに国税当局は拡張解釈、類推解釈で課税を強化している。特に最近、海外脱出者が増加している現状から考えるに、居住者、非居住者の区別は単に滞在日数だけでなく、「租税回避」の意図があるかどうかが問題になるようである。「同族会社の行為計算の否認」ではないが、国税当局の主観的な判断に結論を委ねるなら、この種の裁判が今後、増加することが予想される。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
百田尚樹著 『カエルの楽園』 新潮社 520円+税
ご存知、百田氏の著でありベストセラーである。カエルが主人公である。虐殺や殺人が横行する国から脱出した2匹のアマガエルは、辛い放浪の末に夢の楽園ナパージュにたどり着く。その国は三戒の規律があって、「カエルを信じろ」「カエルと争うな」「争うための力を持つな」で国が平和に保たれているという。そして毎日「謝りソング」という奇妙な歌によって守られていた。だが、南のウシガエルの魔の手が迫り、楽園の本当の姿が明らかになる。
この本は日本の現状を物語っている。平和憲法、非核三原則があれば、他国からの攻撃はない。しかし現在平和なのは、アメリカの核の傘の下にいるからではないか。日本国の本質を鋭く抉り出した、まさに「予言集」であり、国家の意味を問う警世の書であるといえる。ぜひ一読をおすすめしたい。

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