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本年の相続税法の改正、ねたみの国、日本が露わに

前の土曜日、渋谷で富裕層相手に講演をした。皆さん税対策に困っているという顔つきだった。それはそうだろう。今や最高税率は相続税・贈与税で55%、所得税等で55%であるので、金持ちが亡くなって遺産を受け取るのは、遺族が受け取る総合計よりも、国が何もしないで受け取る額の方が大きい。大変な国になった。アベノミクスというより、これは、その前の首相の民主党、野田氏が“税と社会保障の一体改革”の名の下に法を改正したのだ。

 

富裕層は富裕層なりに相続税対策を必死になって考えている。東証一部上場会社のオーナー経営者は、自身の保有する自社株の評価が数百億円に達しているのも、けっして珍しくない。彼らのほとんどが、全財産のうち自社株が占める比率は90%以上である。1000億円の遺産だとしても900億は自社株である。自宅を含め預金等は100億円以下である。しからば、どうやって55%の相続税を払うのだろう。もっとも簡単なのは自社株を売却して払う。しかし、それではオーナー経営者は一代で終わる。

 

それで皆、悩む。さすれば昔、武富士が1500億円の自社株を香港に住む息子に贈与した件があり、それが成功したが、その教訓を生かしてその後、国は法改正をし、贈与する側も、贈与を受ける側も、日本を脱出して5年以上にならないと日本の税がかかることになった。しかし、事業承継に関して驚くべきことに、その5年をクリアすべく日本を脱出する親子が引きも切らない。そこで、2年前に「出国税」なるものを設けて、日本を脱出する者は、出国時に、保有する株を、その時、時価で売却したとして、株式譲渡税を払ってから出て行け、ということになった。それでも脱出者は止まらない。そこで本年、5年基準を改正し、10年基準にした。つまり、日本の相続税・贈与税が課せられないのは、親子とも、日本を脱出して10年以上の条件になったのである。それでも税金のために脱出する人はいるのか、私にはわからない。

 

しかし、日本の経済を支え、多額の税金を払い、多くの人を雇用した人たちが、税金のために日本を捨てなければならない。このような国に未来はあるのだろうかと、平成29年度税制改正を読んで、つくづくと思った。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
弘兼憲史著 『古希に乾杯!ヨレヨレ人生も、また楽し』 海竜社 1000円+税
著者はご存知「課長 島耕作」の漫画で一躍有名になった。松下電器で3年働いた後、漫画家になった。しかし彼も70歳になったというから、月日の経つのは早い。
楽しいことも辛いことも、嬉しいことも悲しいことも適度に混ざっているほうが、人生は面白い。その辛いこと悲しいことを考え方ひとつで、“それもまた楽し”の気持ちに変えるのが本書だとしている。ヨレヨレになっても、その現状を受け入れて、いかに楽しく生きるのかを考えるのが、この本のテーマだとしている。
“人生七十古来稀なり”と杜甫が書いた。当時、70歳まで生きる人は稀だった。弘兼氏はこれからも働く気満々で、渋沢栄一が言った有名な言葉“四十、五十は洟垂れ小僧、六十、七十は働き盛り、九十になって迎えが来たら、百まで待てと追い返せ”。著者は七十、八十が今や働き盛りと言っている。そして、幸せの尺度は社会通念が決めるものではなく、自分が決めるものである。そして、幸せの常識も変わった。老後を豊かに暮らすことが本当に楽しいか、一人で老後を過ごすことは不幸なのか、人間にプライドは必要なのか、家族団らんはいいことなのか、頭のいい人は幸せになれるのか、世界トップの長寿国ということは喜んでいいことか、など。
著者は楽しく生きることは人間の特権として、楽しく生きるには人に好かれる人になることだとしている。

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