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トランプの税制改革、日本も学ぶべき

私は今、ロサンゼルスにいる。先日トランプ大統領がテレビや新聞を通じて来年の税制改革案を発表し、自らアメリカ史に残る最大の減税規模だといっている。しかし報道機関はレーガン大統領が実施した減税規模にはならないなどと書いている。

 

中味をみると、先ず個人の所得税制では、現在の税率7段階から10%、25%、35%の3段階に簡素化するとしている。しかし、いくらの所得から何%にするかは発表していない(現在)。また概算所得控除(Standard Deduction:この制度は日本にはない)を2倍にする代わりに、扶養者控除などの人的控除(Personal Deduction)を廃止するようだ。概算所得控除は国民の70%は利用していて、独身者6,350ドル(70万円)、既婚者12,700ドル(140万円)なので、新税制では倍になり、それぞれ12,700ドル(140万円)、25,400ドル(280万円)となる予定である。その他の項目別控除(Itemized Deduction)では、住宅ローン控除と寄付金控除についてはそのままだが、州税については廃止されるかもしれない。但し、この州税が残っているのはニューヨーク州やカリフォルニア州など民主党が圧倒的に多い州で、テキサス州などの共和党が強い州ではないことに原因があると思われる。

 

法人税については、日本の新聞も大きく取り上げた。35%から15%に下げるということである。しかし日本では全く報道しなかったが、アメリカ企業は税額控除やループホールを活用し、35%の法人税率が適用されている企業は全くないといっても過言ではない。LLCやS Corp.を使えば利益は各持分にパススルーされる。実際、アメリカ企業の実質の税率は15%程度であろう。個人の所得税率の最高は39.6%であり、法人税よりかなり高い。そこで個人も法人税率と同じ15%まで下げるということである(日本の富裕層にとっては夢みたいである)。現在もLLCやS Corp.は弁護士や医者などがよく利用する手で、トランプも同様の手口で節税している。しかしトランプの税制改革で、Tax Policy Centerによれば10年間で1.5兆ドル(170兆円)の歳入が失われるとしている。

 

相続税関係では、相続税そのものを廃止するとしている。2017年の基礎控除(日本では4800万円)がアメリカでは549万ドル(6億円)、夫婦合算だと1098万ドル(12億円)などで、日本と異なり非上場会社株式などは対象外で、中間層にはほとんど相続税が発生しない。

 

Census Bureauでは2017年1年間で多分、270万人のアメリカ人が死亡するが(日本は110万人か?)、そのうち相続税が発生するのは5,200人(日本では12万人)と予測している。つまり死亡者のわずか0.2%(日本は12%)しか相続税の課税対象にならない。アメリカの税収は年間3兆ドル(360兆円)なのに対し、相続税収入は年間197億ドル(2兆2,000億円)なので税収割合から見ればコンマ以下となる。そうは言っても相続税を支払う人は平均379万ドル(4億円)なので、相続税廃止はありがたいことである。

 

Committee for Responsible Federal Budget(CRFB)によればトランプの税制改革によって10年間で5兆5,000億ドル(600兆円)の減税になるが、これを補うには年平均4.5%の経済成長が必要とされている。ちなみに現在の成長率は1.8%(日本はマイナス)なので、財政赤字が大きくなるだろうとしている。トランプの減税案は今後、国会でもめるのは必至である。民主党からは富裕層に対しての減税だという反発が予想されるとフィナンシャルタイムズは書いている。しかし我々日本人にとっては、アメリカの民主党・共和党、どっちの案をとっても富裕層にとっては夢物語である。

 

 

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運の良い成功者は、自分個人の利益よりも全体のことを優先する。大阪に十川(とがわ)ゴム製造所というのがある。十川氏はゴム製品を販売する小さな店に勤めていたが、その店は倒産する。債権者は押し寄せ、従業員は次々と店を出て行った。しかし十川氏は残った。他の店からの誘いも断った。「これまでお世話になったご主人を見捨てるようなことはできない」そして、こう答えた。主人の家財道具が競売にかけられた日、十川氏は自分の貯金を全部おろしてそれを買い取り、主人に渡した。「なぜ、そこまでするのですか」と聞かれたとき、十川氏は「恩人だからです。ご主人が仕事を教えてくれたから、私は今の道へ進めたのですから」
品性とは人徳のこと、恩人を忘れない人徳の高さが運を導くのである。

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