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日本の役員報酬算定もアメリカ方式に

日本の役員報酬は1年間定額給与支給でないと損金にならない。あるいは、役員にボーナスを支給するにしても、期が始まる前に税務署に対して、○×取締役には夏のボーナスは○○円、冬のボーナスは○○円と事前に決めなければならない。役員の給与を損金に落とすためには、いわゆる「事前確定届出給与」が大原則である。しかし、このような面倒くさい縛りがあるのは日本だけで、アメリカでは役員給与の算定方法には何十種類と認められている。

 

最も一般的なのはストック・オプション(Stock Option)。この制度は誰も知っているので説明はしないが、今アメリカで最も多くの企業が取り入れているのは、リストリクテッド・ストック(Restricted Stock)。これは、長期インセンティブを付加する方法で、役員に自社株式を付与する際に、一定期間の譲渡制限を設定する。つまり「あなたに1000株を付与するが、3年後から毎年250株ずつを売却しない」。譲渡制限期間中に株価が下落すれば株式を付与された役員の資産の目減りにつながる。ストック・オプションと明らかに異なり、株主に対する経営責任を明確にする狙いである。

 

次にパフォーマンス・シェア(Performance Share)と呼ばれる報酬算定方式がある。これは、中長期的な業績目標の達成度合いによって交付される株式による役員報酬のことで、通常、主要な目標の達成水準が獲得株数を決定、業績評価の終わりの株価が獲得株数と掛け合わされて長期インセンティブの価値が決まる。リストリクテッド・ストックはストック・オプションのように無価値になることは通常なく、追加払いもないが、一方、株価とだけ連動して業績には連動していないという批判がある。これらを補うためパフォーマンス・シェアが設計されたので、株価と業績を連動させた設計になっている。

 

最近アメリカで流行っている役員報酬算定にファントム・ストックというのがある。実際の株式でなく、架空の株式(Phantom Stock)を用いた役員報酬で、実際に今、株式をこの値で買ったことにしておいて、一定期間後の株価との差を会社から受け取るというもの。この取引は架空(Phantom)であるので、ストック・オプション等と比べて発行済株式数は変わらない。実際に売買しないので直接的に株価に影響を与えない。資本構成や議決権にも変化がない。

 

平成29年度の日本の税制改正では、今まで認められなかった以上のものが認められるようになった。ただ、アメリカの受け売りであるので、実際に試すとどうなるのか。外国資本や外国人取締役が日本の会社に多く存在するようになったため、財務省も先を急いだのである。それなら、相続税や所得税もアメリカ式にしてほしいものである。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
近藤誠著 『健康診断は受けてはいけない』 文芸春秋 740円+税
ご存知のドクター・元慶応大学、現在近藤誠がん研究所所長。
日本人の多くは「健康のため」職場の健診や人間ドックを受診しているが、こうした健診は欧米には全く無い制度である。なぜなら健診を受けたから「より健康になる」「寿命をのばす」という効果を示すデータが存在しないからだ。健診は過剰な医療介入のきっかけとなり、日本人の寿命を縮めている。
がんは早く見つけるほど早く死にやすい。中村勘三郎や川島なお美などである。日本の男性は職場で健診を受けるので男女格差が6歳以上にもなっている。検査の異常値は、自分の「個性」なのだ。その他、脳ドック(MRI)は欧米には存在しない。がん検診の宣伝に今や「がん体験の著名人」が利用されている。健康オタクの人にはぜひ読んでもらいたい本である。

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