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2016年度税制改正、日本とアメリカ

今年度の税制改正、先ず日本、久しぶりに見るべきものがほとんどなかった。珍しい。相続税・贈与税は全くと言っていいほど改正なし、法人税は実効税率が30%を切る以外には増税ばかり、減価償却方法の改正で増税、欠損金の繰越控除の制限、あと金融・証券税制や土地・住宅税制もほとんど目立った改正は無しである。

 

その中で、「空き家」に係る譲渡所得の3000万円控除が目新しいと言えば、そうである。少子高齢化の日本、一人っ子が多く、一人っ子同士が結婚して、仮にどちらかの実家に住んでも片方の実家が不用になる。このようにして、毎年、空き家が6万4千戸増加しているのだそうだ。ほとんどの原因は一人暮らしの親が亡くなって空き家になるケースだということ。

 

空き家を放置しておくと、庭の草が生え茂り、あるいは、防犯上も近所迷惑となることから、空き家をなるべくなくしたい。それでひとり暮らしの親が亡くなって空き家となった家を子が売却した場合、売却益から3000万円を控除するという特例ができた。しかし、はたして利用者がどれほどいるのかと思う。しかし、この「空き家」税制が目玉だと思うと寂しい限りの税制改正である。

 

一方、アメリカの2016年度税制改正はどうなのか。これもオバマ政権最後の年で、見るべきものはない。日本でいうところの時限立法である、租税特別措置法の試験研究費税制控除(Research Credit)の延長、金融関係の所得(Active Financing Income)に関するサブパートFの特例、関連被支配法人間の配当・利子・賃貸料・ロイヤルティーの支払にかかるルックスルー(CFC Look-through)が延長されている。

 

特例である特別償却(’Bonus’ Depreciation)は2016年と2017年は取得価額の50%、2018年は40%、2019年は30%と順次逓減されているのは、日本と同様である。やはりアメリカも財政難か、さらに新市場税額控除(New Market Tax Credit)、雇用税額控除(Work Opportunity Tax Credit)も延長としているだけである。新税制の目玉は何もない。

 

これほど日米ともに税制の特徴のない新税制は珍しい。両国とも無い袖は振れないのか。

 

 

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安田隆夫著 『安売り王一代』 文春新書 800円+税
著者のドンキホーテ元社長は何回か会ったことがあるが、非常に弁舌爽やかなれども、何か裏社会と通じるイメージが強かった印象がある。とても慶応出身とは思えない。しかし、突然と引退を表明して、事実そうなったのには感心し、敬意を表したい。氏は「私は65歳までに経営から退き、残りの人生を悠々自適に過ごそうと思っていた。………仮に私が70歳までCEOを続けたら、自ら辞めるという決断を下す自信がない。そうなれば、死ぬまで会社にしがみつくという、最も酷悪な晩年を迎えるかもしれない。世襲などという発想も、頭をチラつき出しかねない」とある。まことに立派である。この本は創業者の人生はまさに失敗と苦難の連続だとしている。しかしオーナー創業者は、ほとんどこの類だと私は思う。安田氏の特筆すべきは「夜の市場」を開拓したことだと思う。そして「商売は真っ正直がいちばん儲かる」「売ろうとするな、売る側の意図は必ず見破られる。」そして何より、「仕事より楽しいゲームは他にない」と締めくくっている。新幹線で一気に読める。

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