ブログ

フェイスブックCEOの巨額寄附金、真実はどこに

テレビ出演は好きではなかったが、今日はうまく引っ張り出された。12月6日(日)午後10時、フジテレビの報道番組「Mr.サンデー」である。インタビューはフェイスブックCEOのザッカーバーグ。自身の所有するフェイスブック株の99%、時価で450億ドル(約5.5兆円)を「人の可能性の追求と平等促進」のために寄附することを発表したのだ。彼は慈善活動のために妻のプリシラ・チャンとともに、フェイスブックの株の寄附先として夫妻が設立したLLC「チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブ」を指定し、このLLCを通じて教育や医療、ネットの普及などの分野で慈善活動を支援する方針だという。

 

アメリカは寄附社会である。ビル・ゲイツやウォーレン・バフェット、スティーブ・ジョブズも巨大な寄付を行った。大昔にはカーネギーやJ.P.モルガンなど、それこそ国を救うような寄附を行った。それが為、死後も長く名を残してきた。しかし、ザッカーバーグの5.5兆円の寄附に関してアメリカ人のほとんどが、ウェルカムとしていない。何故なのか。それは自身が設立したLLCに寄附するとしたからだ。本来アメリカでは慈善団体に寄附するのが普通である。それは寄附者自身が設立した財団などが主であるが、寄附金控除を受けることができる団体である。それには厳格な基準があり、毎年監査法人の監査も受けなければならないし、寄附者の私的なことに資金が充てられたり、利益につながったりはできない。決算発表もしなければならない。

 

アメリカは高額所得者の実質税負担率は日本と比べものにならないくらい低い。これは一つの伝統である。そのために多額の寄附を強いられている(強制ではないが)。ビル・ゲイツは毎年1千億円を超える寄附をしている。有名芸能人やプロスポーツ選手もしかりだ。日本は政党に対する寄附も含めて、年間5000億円だが、アメリカの寄附金総額は年間なんと24兆円。日本国の法人税収入や所得税収入よりも遥かに凌いでいる。そのなかでザッカーバーグの寄附は慈善団体への寄附ではないし、自らのLLCへの寄附である。そのLLCは慈善団体に寄附するといっているが、アメリカ国民は疑心暗鬼である。何故LLCなのか?である。

 

LLC(Limited Liability Company)は州法に基づいて設立される企業体で、税法上は出資者にその利益が直接課税されるが、IRSがチェック・ザ・ボックス(Check the Box)規制を導入し、構成員(出資者を含む)とLLC企業体どちらに課税されるかを選択できる。株式会社はその利益に対して法人税が課され、株主に分配(配当)するときにも所得税が課される二重課税であるが、それを回避できる使い勝手のよい組織体であるため、中身が不透明である。公開されない。

 

したがってアメリカ国民からは5.5兆円の株式寄附について、寄附してもフェイスブックに対して影響力を残したいのだろう、とか、自分の将来の利益につながる寄附をするのではないか、あるいは、議決権を行使できるようにLLCを使ったのではないかと勘繰られている。しかし寄附の真意はなぞである。

 

☆ 推薦図書 ☆
本田直之著 『脱東京』 毎日新聞出版社 1500円+税
著者はハワイでの知人である。この著は「仕事と遊びでの垣根をなくす、新しい移住」を解説している。
最近、東京から他の地域に移住する、この現象は、UターンやIターンなどによる移住、もしくは、リタイアした人に多い「田舎暮らし」ではない。もっと前向きなもので、ビジネスの第一線で活躍していた人たちが、自分のライフスタイルを実現するために移住し始めている。日本も一か所に定住する時代ではなくなった。その国の一か所の年に人口が集中しているのは、世界的に見ても東京とソウルだけだ。東京圏の人口比率30.3%、ニューヨーク、ベルリン、ローマなどでは10%未満である。
高い住宅ローンを払うために、満員電車にもみくちゃにされて働くのは本当の生き方だろうか。新しい移住は、ほとんどの人が一人でいくつもの仕事をしている。そのため移住した地域だけでなく、東京や他の都市でも仕事をする。東京と地域を行き来するのが当たり前で、インターネット等の普及により、それが可能になったとしている。

関連記事

  1. ニセ領収書の発行元「B勘屋」
  2. 国外財産調書、日米の差
  3. 税金取り立て屋、アメリカの場合
  4. ギリシャ危機と地下経済と脱税
  5. 節税目的の養子もOK、最高裁の判決
  6. アメリカの消費税徴収事情
  7. アメリカ、転売チケットの課税事情
  8. 低迷するニューヨーク株式市場と株の節税対策

アーカイブ

PAGE TOP