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マイナンバー制度大丈夫?アメリカでは大変な騒ぎ(IRS)

いよいよ日本ではマイナンバーが全国民に割り当てられ、それが無いと税金申告や年金給付ができなくなる。アメリカではソーシャルセキュリティーナンバー(SSN)が無いと国民として暮らせない。日本もアメリカのそれを狙っての制度だろう。SSNの歴史も古い。アメリカの個人の確定申告は1ページ目にSSNの数字を書くことから始まる。

 

さてアメリカでは最近ID Theft、つまり個人情報が盗まれ勝手に確定申告が行われ、還付金を搾取される事件が多発している。実際、納税者が確定申告を行うと税務暑からは、既に申告は行われ還付金が既に支払われていたと言われる。このほどロサンジェルスタイムズ紙によると、アラバマ州ではこのような申告詐欺犯を取り締まる税務職員が、この詐欺に引っかかったという事件が起こった。ある日、この税務職員のもとに自分の働いているアラバマ税務暑から還付金通知が届き、個人情報の確認を行うというものであった。彼としてはまだ確定申告をしていないので、直ぐに自分の個人情報が盗まれたと直感し、この件をIRS及びアラバマ州税務暑に通報をして事件が発覚したのである。

 

このような税務申告情報を盗み、連邦及び州に勝手に確定申告を行い、還付金を騙し取るケースが近年多発しており、このような詐欺防止のため2013年は58億ドル(7000億円)のコストがかかっているとの報告がある。日本の振り込め詐欺防止みたいなものである。特にIntuit社のTurbo Taxを利用して申告情報が盗まれるケースが多く、2月にはE-fileを24時間閉鎖する事態にもなった。IRS(アメリカ国税庁)は2014年には既に87万5000件もの被害が出ていると公表した。

 

アラバマ州の税務暑のケースでは、かなり複雑な取引を経て還付金が騙し取られていることが判明。今回の詐欺犯は連邦税7568ドル(90万円)、州税1044ドル(12万円)の還付金があるように確定申告をしたが、州からの還付金は入金先の銀行口座番号が昨年と変更されていたことから支払がストップ、その結果詐欺が見つかったが、昨年と同じ銀行口座であれば判らなかった。ただ、連邦からの還付金の支払は一部行われていた。このアラバマ州の税務職員はIntuit社の詐欺報告を行っていたため、Intuit社は連邦税の支払いを委託している Tax Product Groupを通じ  JP Morgan Chaseに詐欺のアラートを掛けた。還付金の一部 $5657.43を詐欺者の口座のある prepaid debit card のVenderであるRush Cardにトランスファーを行なおうとしたところ、詐欺防止アラートに引っかかりそれが出来なくなり、JP Morgan ChaseはTax  Product Groupに $5657.43を戻し、Tax  Product Groupは同額をIRSに返還したというわけである。

 

しかし$5657.43と還付金$7568には1900ドル以上もの乖離があるが、この差額はどこにいったのか?Intuit社及び Tax product Group社は、詐欺犯はIntuit 社の Amazon.com Gift card Refund Bonus Programにトランスファーをしてしまい、戻ってこないと言っている。このAmazonプログラムについてIntuit社は詳細の開示を拒否しておりわからないが、確実に盗まれたことは確かである。税務職員が被害に遭ったのは傑作だが、アメリカでは、この税務申告詐欺はかなり深刻な問題である。

 

今後日本でも導入されるマイナンバー制度だが、個人情報が漏えいする危険性をはらんでいる。フランスなど個人情報管理が徹底されている国でも漏れると問題になっている。日本のマイナンバーは職場や金融機関、役所で、一般的に使われ、アメリカよりはるかに利用頻度が高く、税金還付や、年金受領、はたまた振り込め詐欺などに不正利用されるような気がしてならない、と思うのは筆者だけではあるまい。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
奥村眞吾著 『税理士が知っておきたい「信託の活用事例と税務の急所」』 清文社 2200円+税
今回は初めて私の本を取り上げた。実際は遠慮していたのだが、世のためになると思って書いているので、これからはこの場でも取り上げていこうと思っている。「信託」はこれからの日本、特に高齢化社会では欠かすことのできない制度である。信託と言えば信託銀行のことだと言う人が多いのが残念だが、そうではない。欧米では中年になれば、自分や夫婦の財産を信託するのは当たり前。特に離婚再婚を繰り返す米国では必要なもので、遺言では出来ない相続や贈与も信託を使えば簡単である。最近では家族信託なる言葉もでてきた。信託法は大正時代に立法化されたが、平成19年に大改正され、利用しやすくなっている。これを使わない手はない。サブタイトルとして「税理士が知っておきたい」という文字を清文社編集者がつけた。さすがである。信託を理解できなければ、富裕層を相手にできないからである。

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