金庫株というのをご存知だろうか。会社が自分の会社の株式を保有することである。その行為を自社株買いという。株主の方から見ると、株主の所有する株を、その株式の発行会社に売るということである。上場会社が自社株買いをすると、売却した株主は単に株式譲渡損益の計算をするだけである。
700円で買った株を1000円で発行会社に売れば、株式譲渡益は300円というわけだ。ところが、非上場会社の場合はこのようにならない。「みなし配当」というややこしい問題が生じるのである。
仮に700円で買った株を1000円で発行会社に自社株買いとして株主が売った。売却した時に会社が1000円で買ったわけだが、その1000円の中身を見ると、資本等の金額が400円、利益積立金等からなる額が600円であるとする。
そうすると、株式は利益積立金等からなる部分は「みなし配当」となり、600円が「みなし配当」課税となる。一方、株式譲渡損益の認識では「資本等の金額」-「取得価額」である。つまり400円-700円=△300円、株式譲渡損が300円出る。みなし配当が600円ということになる。
自社株として売った者が、個人ではなく法人であったとしよう。この場合、売った法人は株式譲渡損が300円なので、これは損金である。一方、600円のみなし配当は益金であるが、税引後利益の配当にまた課税ということで二重課税の防止から、この受取配当金は益金不算入ということになる(平成22年度税制改正で一部改められた)。このようになると700円で買った株を1000円で発行法人に売却して300円の利益を得ても、実際は損金の300円だけを計上するので節税効果は抜群である。
しかしこのほど国税当局はある事例について、この方法を認めなかった。根拠の一つに平成17年12月19日の最高裁判決で、外国税額控除の適用をめぐり争われた事件で、税法の条文に必ずしも違反していなくても、「権利濫用の法理」により否認できる旨、最高裁が断を下した。いかにも民間人を知らない公務員的な判決で私は仰天したが、国税当局がこのみなし配当を利用した納税者側の処理についてこの最高裁の「権利の濫用」認定を持ち出して否認した。
日本は租税法律主義である。私法に違反していなければ(つまり合法)課税されないということであるが、違反していなくとも、権利の濫用といわれれば課税される。私的自治の自由があるのか。北朝鮮ではないのである。悲しい法治国家である。
