地価下落を加速させる新税制

国土交通省がこのほど発表した公示地価は全国平均で前年比4.6%下落し、2年連続で前年を下回った。特に下落率が大きい10地点のうち9地点は新橋や銀座などで、前年比下落率が25%以上だと公表した。筆者の見るところ前年比下落率は25%どころではなく50%に近い。銀座の公示価格は下がっても坪当たり8000万円を超えている。確かに3年前は1億円でも買えなかったが、今や

5000万円以下である。だから金融機関の不良債権が毎日増幅しているのである。

 
この最中、今月成立した税法を見ると、資産デフレに拍車をかけるものばかり。昭和の終わりの資産バブルを思い起こしてほしい。昭和57~58年頃からじわりと地価が上昇し始めた。路線価と時価がかけ離れてきたのである。路線価の2倍や3倍に都心部の地価がなった。そこで現金・預金で資産を置いておくより土地に換えた方が相続税対策上有利になる。さらに賃貸住宅を建てた方がもっと評価額が下がる。土地は貸家建付地になり、借家権割合に借地権割合を乗じた分だけ下がるから、路線価額から20%も評価減となる。しかも建物は建築代金で評価されず固定資産税評価額で評価され、しかも借家権割合を引いてくれるから、結果として建築代金の4割で評価。アパートの一棟買いを
10億円でしても相続税評価額は3億円という具合に、つまり税対策で不動産バブルが生じたのである。
 
そして一方、当時話題になったのが文京区の建売り住宅。何と平均5億円(一戸当たり)の物件が大量に売りに出され完売した。当時、新橋など地上げが盛んになり、長屋1軒が数億円で売れたのである。売った者は売り放しだと税金がかかるが、売却価額以上の住宅を買い換えれば一銭の税金もかからない「居住宅資産の買換特例」を使う。しかし買換特例は売った年の翌年末なので、そうそう数億円の住宅など売り物があまりない。そこで文京区の5億円の新築住宅に飛びついたというわけである。
 
今年の新税制の一つに「小規模宅地等特例の改正」がある。これは被相続人の居住に供していた土地は240㎡まで80%減額、事業用であれば400㎡まで80%減額されるというもの。この特例の持つ節税効果は大きい。240㎡(居住用)で1億円の土地なら2000万円で評価できる。8000万円の減額である。例えば渋谷区松涛あたりで、坪500万円で70坪(231㎡)の居住用宅地であれば3億5000万円が7000万円の評価になるのであるから、何と2億8000万円の減税効果がある。つまり坪当たりの価額が高額であるほど節税効果がある。しかしこの特例も、事業や居住を継承しない場合などは適用できないなど大幅な規制ができた。高級住宅街の不動産の取得要因の大きな原因が外されたのである。今後確実に高級住宅地の地価は下がる。
 
もう一つ外されたのは、「居住用資産の買換特例」。改正前は5億円で住宅を売って5億円以上で住宅を買えば税金がかからなかったが、改正で売却価額が2億円以上の住宅については買換特例を一切認めないということになった。この改正も同様に高級住宅地の需要が減少する。
 
政府は地価下落が経済に与える影響は大きいとして、今回の地価下落は不動産デフレで消費の足を引っ張り、しかも担保価値の減少で銀行の財務内容を悪化させ、デフレをさらに加速すると見ている。そのための対策を急いでいる。
 
ならば、平成22年度改正税法は筆者に言わしめれば、ほとんどが資産デフレを加速させるものであり、一つ一つの税法は、「事業仕分け」のように「木を見て森を見ず」的であり、あまりにも税法を知らなさ過ぎる議員と財政を第一に考える官僚とが作成した新税法である、といっても過言ではない。