相続税調査、海外資産隠ぺいが増加

国税庁は最近、相続税申告において、海外資産関連事案の調査を頻繁に行い、1年間で調査件数は475件、うち377件(80%)で申告漏れが見つかった。1件あたりの課税価格で申告漏れは何と9,362万円。1件当たり約1億円もあがれば、海外に職員を派遣しても十分にペイする。これからも多くなることが予想される。

 
かつて、米国を利用した贈与税対策が流行ったことがあった。日本は贈与を受けた者が贈与税を払う(受贈者課税)制度。鳩山首相も6億円納めた。米国は贈与をした人が贈与税を払う(贈与者課税)制度。個人の税金は国籍に関係なく、居住国で納める義務がある。日本人でも米国に住んでいれば、米国の所得税、地方税がかかってくるが、日本での税金は原則として無い。それをよいことに、米国に子を住まわせ、その子に財産を生前贈与する。財産をもらった子は、日本に住んでいれば贈与税を払わなければならないが、米国居住者なので受贈者は払う義務はない。一方、親は日本の居住者なので、贈与者は日本で払う義務はない。したがって、両国で課税が発生しなかった。
 
2000年にこの税法が改正され、日本国籍を有していれば、贈与や相続で、被相続人、相続人、贈与者、受贈者のいずれかが、課税発生した5年以内に国内に住所を有していた場合は、たとえ海外財産を日本の非居住者が取得しても、相続税や贈与税はかかることになった。いわゆる国籍条項ができた。そのため、今までは海外に置いていた(あるいは隠していた)財産は、なかなか課税対象にならなかったが、今は違う。そのような訳で、海外に隠す方も、以前は捕まらなかったことも、現在は調査手法も巧妙になり、あっさり網にかかってしまうことが多くなった。1件あたり平均の漏れが1億円だから、1件で10億円以上もザラにある。
 
どのような方法で国税当局は海外に資産を隠している人を見つけるのだろうか。まず、外資系銀行に多くの預金をしている人。このような人は海外に何らかの資産を持っている人が多い。不動産を所有しているのも珍しくない。次に、海外で居住したことがある人。後進国は別だが、欧米だとターゲットになる。これらの人は節税慣れ(あるいは脱税慣れ)していない人が意外と多く、「海外預金などは日本に戻さない限り、日本の税務署にはわからない」と思っている。日本の国税当局もバカではなく、2000年の改正以来、この数年前から脱税摘発も相当慣れてきた。シンガポールや香港などでの資産隠しの暴き方は、今やIRS(アメリカ国税)よりうまくなってきたのだ。しかし、信託を組まれた場合や匿名組合を作った場合、あるいは米国のLLCを組成した時などの摘発能力には、まだまだ勉強しなければならないところがたくさんある。今のところは、日本の納税者の海外資産隠しは幼稚過ぎるので助かってはいるが。