今年3月、私のブログに、何故か日本のメディアが書かない出来事として、スイスのUBSと米国政府の攻防があるとしてきた。これは米国政府がスイスの金融最大手UBSは顧客の脱税を助長してきたとして、UBSに秘密口座がある米国人全てを明らかにせよとして訴えたものだ。これについてUBSは顧客の脱税を助長してきたことを認め、米国司法当局は犯罪訴訟を取り下げる代わりに、UBSは7億8,000万ドルの和解金の支払いと250人のアメリカ人の秘密口座の開示につき同意した。さらにその翌日、米国司法当局はUBSに対し、所得隠しに使われている5万2,000人とも言われる米国人の口座を全て開示しろと迫った・・・とまでブログに書いた。
このほどスイス政府からこの問題に対し公式発表があった。結論を言うと「スイス政府はUBSが米国政府に対し5万2,000人の顧客データを引き渡すことを阻止する」というもの。現在米国IRS(日本の国税庁)がUBSに対しマイアミで訴訟を起こしており、その判決は来週7月13日(日本時間14日)に言い渡されることになっている。判決直前にスイス政府が公式発表した背景には、たとえ米国の裁判所でUBSに対し口座開示の命令が出たとしても、スイス国はそれを断固阻止するというもので、「スイスのUBSは米国の命令に従う必要は全くない」という宣言をしたのである。つまり、スイスの銀行は今まで通り富裕層の人は利用して下さい、アメリカが何を言おうとそれはアメリカ国内の話であって、オバマがいくら恫喝してもスイスは顧客の秘密を守ります、ということである。
現在スイスとアメリカで租税条約の改訂を進めているが、この条約の中で、租税回避の目的で開設されたスイス国内口座については開示を行なうというもの。但しこれは、米国が脱税しているという確固たる証拠を示す必要がある。従って事実上は口座開示が難しいではないか。オバマ政権は3月のUBS事件で米国人富裕層から多額の資金が米国政府に流れくるという見通しだったが、当てが外れた格好だ。今後、アメリカ政府がどう出るか見ものである。しかし、200年以上の歴史があり、ヒトラーでさえ秘密資金を暴けなかったスイスの銀行。今度もまた、したたかさを見せつけられた思いがする。
