リーマンショック以降、目を覆うばかりの米巨大企業の倒産。兆円規模の赤字、GMをはじめ決算が組めない上場会社の続出等々。ところが先程、四半期決算でシティやバンクオブアメリカなどの金融機関がそろって黒字に転じたのである。そんなに急に景気が良くなったのか?
米国は決算にあたっては時価会計を採っている。いや、採ってきたのである。しかるに、バーナキンもガイドナーも今の時価会計はおかしいと言い始めた。多くの相場を持つ商品を束ねて金融商品として売っている金融機関だが、リーマンショックで価格が10%になったとか。そもそも、その金融商品の相場がなくなったとかで、減損しなければならない保有資産が膨大なものになり、巨額の赤字の計上を余儀なくされたのである。昔は取得価額で貸借対照表に計上したのだが、今は決算日の終値(時価)で計上しなければならない。
巨額赤字計上会社の最大の原因は、この時価会計にあると判断した政府は、
例えば100円で買った株が決算日に10円となった。そうすると90円の損を出さないとならないが、はたしてこの10円は時価なのか。ひょっとすると10円は一瞬、売り手が多すぎてこの値段になったが、時が経つと80円位までは戻るのではないか。いや絶対戻ると確信したのなら今の10円は適正な時価を表しているのではなく、投資家にとっても惑わされる。それなら戻るであろう80円で決算を組んでも良いのではないか。
ということになった。いわゆる理論価格でもOK。そうなると、赤字予想だった企業が続々と黒字企業に転換したのである。バンクオブアメリカなどは黒字発表した日にストップ安をつけたのも、投資家は皆バカではなかった証明にもなる。
一方、日本はどうか。さすがに米国流をすぐ取り入れることははかったが、上場企業に、この会社は将来大丈夫ですかということを監査法人にコメントさせる制度がある。いわゆるゴーイング・コンサーン(GC)。「継続企業」かどうか、つまり、これから先も倒産の危険はあまりないですよ、ということを有価証券報告書に記載しなければならない。GCの注記がでると当然株価は下がる。さらに上場維持の基準にも抵触してくる。ところが、昨今の不況でこのGC注記会社が続出してきたのである。
そこで金融庁は「四半期財務諸表等の用語、株式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」を改正した。改正前は、継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事象または状況が存在する場合に、四半期財務諸表において「継続企業の前提に関する注記」を行うことを求めていたが、改正では継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象または状況が存在する場合であって、当該事象または状況を解消し、または改善するための対応をしてもなお継続企業の前提に重要な不確実性が認められるときに、初めて「継続企業の前提に関する注記」を行うこととされた。要するに、今までは重要な疑義を抱かせる事象が存在するだけでGC注記が付されたが、改正後はそのような事象が存在しても、その事象を解消し、または改善するための対応策があれば注記しなくてもよいという訳だ。
さらにこのような企業経営のリスクがないかどうかを点検する監査法人の作業も、今までは前本決算まで遡って調査し、最大1年程度が調査対象期間となっていたが、改正後は3か月前までの監査でよくなった。これが、これから大量に出るであろう上場会社のGC注記も、かなり減少するであろうことが容易に推察できる。
今では意見の不表明などを証券取引所に持って行こうものなら、取引所の方で延命策を考えてくれるようになった。取引所から去っていく企業数の方が新規上場会社を上回るようになると、それこそ取引所もお高く留まれる状況ではなくなる。上場会社様があってこその取引所なのだから。日本の金融庁も商売人になったということか。
