ウォールストリート・ジャーナル、フィナンシャル・タイムズ、ニューヨーク・タイムズなど複数のメディアが書いているが、この程、スイスが銀行守秘義務(Bank Secrecy)法の見直しを検討すると発表した。つまり、秘密口座の正式所有者の開示を行うことを示唆する発表を行った。続いて、リヒテンシュタインやアンドラも同様の声明を行った。これは、G20の前に何とかこの問題を処理しておきたかったというのが真相。
G20ではOECDにより、ブラックリスト国を共有することが議題に取り上げられており、2005年に作成されたOECDのブラックリスト国は、リヒテンシュタイン、アンドラ、モナコの3カ国だったものが、フランスとドイツの強硬な圧力によって、隣国であるスイスやルクセンブルク、オーストラリアなども加えられ、さらにはシンガポール、香港も仲間に入れられ、合計30カ国に拡大された。前にブログで書いた、アメリカが名指しした預金してはいけない国々とほぼ同様のものとされている。今回、スイスなどが折れた背景には、世界的な財政難によるアメリカやEU諸国の異常とも思えるぐらいの締め付けと、世界史上最大規模の金融詐欺で捕まったマードフがこれらオフショアの金融機関を利用していたことである。
驚くことに、OECDの発表では、これらオフショアの銀行で管理されている預金額は$11.5trillion、つまり1,150兆円とされ、その1%、11.5兆円がリヒテンシュタインとアンドラで管理されていると計算している。
過去にヒトラーがユダヤ人の秘密口座を暴こうと、スイスのプライベートバンクに圧力をかけたが、見事その秘密性が遺憾なく発揮され事なきを得た。その後、麻薬関連、さらには9・11以後、テロリストにも使われる等の問題も指摘され、徐々に秘密性が失われてきているのも事実である。スイスをはじめオフショアの国々は、外国人の資産や収入を外国の税務当局から守るという意識は持っていないのが特徴。なぜなら、これらの国々の法律では、税金の逃避を禁止していないからであり、しかも外国の税務当局の手伝いをする義務を全く負っていない、というのが彼らの議論の根底にある。従って、今回スイス等が発表した秘密口座の開示に対してフランスやドイツは全く懐疑的で、サルコジも「そのような口先だけの発表では信用できない。実際に行動だけが真実を語る」と言っている。
スイスには200兆円もの外国人預金残高がると言われていて、アメリカを始めEU諸国のプレッシャーがもの凄い中、700兆円と言われる富裕層ビジネスに大きな影響を与えると見られ、大変注目されている。これら一連のアメリカやEU諸国の圧力は、シンガポール、香港、ドバイを逆に潤している。しかし、シンガポールにある外国人預金300兆円に対し、ただ見ているだけのアメリカ、EU諸国ではないだろう。これからの見ものである。
しかし、富裕層の資産隠しは今に始まったわけではないが、オフショアの銀行に全隠匿資産を預けている富裕層はあるまい。私の知る限りの富裕層も全資産の4割が良いところだろう。残りはどうしているかについては、私も守秘義務があるのでここでは伏せておきたい。
