乳房再建手術は美容整形ではない

東京国税局はこのほど、乳がんの治療に伴い乳房を失った患者に対する「CAL組織増大術」を用いた乳房再建手術に係る費用の医療費控除を認めるとした。

 
確定申告を前に医療費控除について少し説明する。1年間にかかった医療費をその年分の所得から控除できる医療費とは、医師、歯科医師に支払った診療費、医療費が原則で、あくまで病気を治すための費用である。したがって次のようなものは医療費控除の対象ではないと、当局はハッキリ言っている。
       容姿を美化し、または容貌を変えるなどの目的で支払った整形手術費用
       健康増進や疾病予防などのための医薬品の購入費
       人間ドックなどの健康診断のための費用
       親族に支払う療養上の世話の費用
       日常生活の用を足すための眼鏡、義手、義足、松葉杖、補聴器などの購入費用
 
国税当局は以前から、女性の胸にかかわる手術は美容の一環とみなして、病気を治癒する行為と一線を画してきたのではあるが、このほど考えを改め、乳がんの治療では、一般に腫瘍箇所の除去と共に乳房の切除が行われることから、乳房の概観を復元させることは乳房を原状に回復させる行為と考えられる。そしてCAL組織増大術を用いた乳房再建手術は、医師により乳がんの治療に伴い乳房を失った患者に対して行われる乳房再建手術であることから、乳がんという病気の治療の一部を構成するものと考えられるとして、医療費控除の対象にした。
 
それにしても国税当局は今まで、女性が施す手術については冷ややかな態度をとっていた。この乳房の手術にしても、乳房の手術は豊胸手術以外何ものでもなく、乳がんの術後であっても、乳房がないことが日常生活や健康の管理に何ら影響がないから認めていなかったが、ある団体(21世紀における国民健康づくり運動)から、切除前と同様の生活を女性は送ることができないとし、「容姿を美化し、または容貌を変える費用」(所得税基本通達73‐4)にあたらないとした指摘を受け、東京国税局は認めることになった。
 

事の成り行きはさておき、女心も税制を改正させる時代になったので、財務省も今まで続いた租税法律主義をそろそろ改める時期にきているのかもしれない。