今回は久しぶりにウォールストリートジャーナル誌からの話題を伝えることにする。スイスのプライベートバンクとアメリカの国税庁(IRS)の攻防も次第にエスカレートしつつある。ナチスのヒットラーがユダヤ人の隠し口座を暴くためスイスの銀行を強制捜索したが、ほとんど堅い守秘義務とシステムに守られて見つけ出せなかった。そのようなこともあって、スイスのプライベートバンクは秘密の資金を隠すのに最善の受け皿として、世界各国の元首や資産家に利用されている。
ところが、見出しのように今やアメリカ国税との大変な争いに発展してしまっている。ウォールストリートジャーナルによると、スイスにあるUBSのプライベートバンキングのトップがアメリカで起訴された。IRSはあまりにも多いアメリカ人資産家のオフショアを利用した税金逃れ、そして彼らの多くが利用しているスイスの銀行の秘密主義を暴くのに本腰を入れたというのだ。この急なIRSのスイスプライベートバンクへの強襲に対応すべく、UBSの顧客は税金専門の弁護士を各々雇い、摘発された場合に、IRS Voluntary Disclosureプログラムを通じ恩赦を求める。このプログラムは、米国民に対し税金逃れ(脱税)をしたということを認めさせた上で、追徴税と重加算税を払うことにより、刑事訴追を免れるというものだ。つまり、刑務所に入らなくて済むというもの。
20年前からUBSと米国政府、スイス政府がアメリカ人の顧客口座の情報開示を行うという折衝が続いていて、アメリカがスイスの秘密口座に穴を開けたい努力は凄まじいものがある。
今回の起訴はそもそも、昨年にUBSの元プライベートバンカーが米国法務省に銀行の顧客口座の内容を提供したことがきっかけとなって、ついに連邦裁判所がUBSに対しアメリカ人富裕顧客の情報を提供するように命令した。それにおいそれと従わなかったトップが、2万人といわれるUBSのアメリカ人顧客の資産約200億ドルを隠ぺいしたとして起訴されたのだ。UBSの多くの顧客は税金摘発を恐れて毎日怯えているようだが、UBSがアメリカ政府に顧客名簿を渡さないことに賭けている者の方が多いというから驚きである。
しかし、裏でVoluntary Disclosureプログラムを利用し、税金は払うので刑事訴追だけは勘弁して欲しいと密かに修正申告をしている者も多数いると書いている。この事実を何故か日本のマスコミは一行たりとも書いていない。私の知るところでは、アメリカ人以上にもっと恐れなくてはならない日本人も多数いるのだが……
