相続税調査、相変わらずのお粗末さ

東京国税局と関信局はこのほど、相続税調査事績を発表した。東京国税局の申告事績によると、相続税の対象となった課税価格は3兆9,524億円、申告税額は5,939億円といずれも前年を上回ったが、被相続人一人当たりの課税価格は2億7,350万円、申告税額は4,110万円と前年を少し下回ったとある。しかし考えて見れば、一人当たりの税金が4,110万円となると、世界でも類を見ないであろう突出した税額である。相続財産の中味は、土地が49.3%、預金が20.4%、有価証券が16.0%である。土地や家屋、それに非上場株式が相続財産全体の6割強を占める。相続税率は3億円を超えると50%。これでは現金で納付できないのも頷ける。

 
一方、提出された相続税申告書を見て、これはおかしいと税務調査を行なった件数は3,662件、そのうち80%の2,930件で申告漏れが見つかった。何と一件当たりの申告漏れ課税価格は3,802万円。一件当たりの追徴税額は928万円、加算税を含めると1,100万円にもなる。相続人に納税意欲が皆無かというと、残念ながらまともに申告すると納税資金がなく、相続税破産になるのではないかという恐怖がちらつくらしい。ちなみに東京局で1年間に相続税の脱税で摘発された三つの事件を見てみることにする。
 
1.海外の銀行預金がバレた事例
被相続人は海外でリゾートマンションを所有していて、これを賃貸し、かなりの不動産所得を毎年得ていた。当然この不動産所得を確定申告していたが、亡くなる直前に売却し、海外の銀行にその代金を預け入れていた。相続人は海外の預金だからわかるはずがないと申告除外していたが、発覚されたというものである。
これも被相続人が確定申告でわざわざ海外の賃貸収入を明らかにしていたのだから、その人が亡くなった後どうしたのか調べるのが当たり前だと思われるが、相続人に一般常識が欠落していたのかもしれない。
 
2.現金を隠匿していた事例
不動産賃貸業を営んでいた被相続人は生前、多額の割引債券を所有していて、それを償還していた事実を銀行への問い合わせで税務署側はキャッチしていた。しかし、相続税の申告書にはそれらが記載されていなかったので税務調査を行なった結果、自宅の床下から現金で2億6,100万円が見つかり、あっけなく御用となった。
当たり前のことだが、相続税の調査は、まず金融機関、これは貸金庫も含めて税務署は行なう。そして自宅は徹底的にやる。従って隠す時は、貸金庫と自宅、それに愛人宅には隠してはいけないのは常識となっている。
 
3.別荘に金地金を隠匿していた事例
被相続人は生前に大量の金地金を正規ルートで購入していたが、相続人の相続税申告書に記載されていなかったので税務署が調べたところ、別荘の敷地内にある倉庫と自家用のヨットの中に隠していた。その額4億8,600万円。
この事件も典型的な昔風の隠匿方法である。昔風といえば、その他に自家用車のトランク、楽器の中、犬小屋なども含まれるが、今もこのように摘発される隠匿場所を見ると、脱税者は学習していないのではないかと思われる。