適格と非適格、どちらの合併が得か

適格合併だと税金がかからないが、非適格合併だと課税されると思っている人が多い。専門家でもそう信じている者がいる。このほどある会社が非適格合併として申告したが、税務署から、それは適格合併だと指摘を受けた事例まで出てきた。

 
企業の再編を促進するのを目的として、株式交換・移転、合併、会社分割などを行う際に、被合併会社の資産を時価ではなく簿価で移転させ、譲渡損益課税を繰り延べる企業再編税制が小泉内閣の下で成立した。合併時などで余計な税金を心配しないで済むようにとの配慮から、合併・分割を促した。この、税金の心配のない合併を「適格合併」と名付け、適格合併に該当する要件の一つに「合併会社が被合併会社の株主に合併法人の株式以外の資産が交付されない」がある。つまり、金銭を被合併法人の株主に交付すれば、非適格合併になるというもの。
 
適格合併に該当すれば、土地や株など移転した資産について「簿価引継ぎ」になり、譲渡損益の繰延が行われ、譲渡損益は発生しない。一方、非適格合併に該当すれば、移転資産について時価評価が行われ、譲渡益課税が行われることになる。従って、適格合併は資産の移転に伴う課税は生じないので、非適格合併に比べて税金のメリットは大いにあると言われている。
 
しかし、この適格合併有利論には大きな前提がある。それは、被合併会社の資産に含み益があるからということである。反対に含み損がある場合はどうだろうか?適格合併である故に、簿価引継ぎによって移転する資産の「含み損」を顕在化することが出来ないのである。企業の都合によって含み損を顕在化させたい場合もある。そのために非適格合併にならなければならないという訳だ。
 
しかし、適格・非適格はその会社の選択によるものではない。税法上の規定により判断される。適格に該当するには、まず、合併時に被合併法人の株主に合併法人の株式以外のモノが交付されないとある。そこで、非適格になるためには、金銭の交付をすればよいわけだ。問題の事例は、合併法人は被合併法人の株主に合併法人の株式と株式以外の金銭も交付した。そしてその法人は、自ら申告で非適格合併とし、その移転資産に係る譲渡損失を多額に計上していた。ところが、税務署は、「税負担の軽減を目的として恣意的に適格・不適格の要件に該当するように再編の内容等を変更している場合は、課税上弊害がある」として、非適格と申告しているものを、適格合併として申告するよう更正した。
 

日本も法治国家である以上、このような判断を課税当局のそれこそ恣意的判断に委ねるようだと、国際的に孤立するのではないだろうか?